加島祥造さんは1923(大正12)年、東京・神田の商家に生まれ、早大を卒業後、信州大や青山学院女子短大などで英文学を教え、フォークナーやM・トウェインなどの翻訳を多数手がけており、若い頃には詩作グループ「荒地」に名を連ねた詩人でもありました。
その後、古希を迎えて「老子」に出会い、東洋思想に傾倒。
長野県南部の伊那谷にひとり移住し、晩年は豊かな自然に囲まれながら、詩を詠み、花木を写生する生活を送ったそうです。
その加島さんの詩集、「求めない」は現代に生きる私たちの心に染み入る内容となっています。

求めない すると心が静かになる
求めない するとひとから自由になる
求めない すると自分が無意識にさがしていたものに気づく
求めない するといまじゅうぶんに持っていると気づく
求めない するといま持っているものがいきいきとしてくる
求めない するとそれでも案外生きてゆけると知る
求めない すると改めて人間は求めるものだと知る
求めない するとキョロキョロしていた自分が可笑しくなる
求めない するとちょっとはずかしくなるよあんなクダラヌものを求めていたのか、と
加島さんは人間は「何かを求めずにはいられない存在」であることを認めた上で、上記のような詩を上梓されていたそうです。
日々、厳しい競争社会になりつつある今だからこそ、求めない、分け合う心が、ますます大切になってくるのかもしれません。
人と他の動物の違いとして、「人は何事も必要以上に求めて過ぎてしまう」という性質があるのかもしれません。
だからこそ、私達は時折、客観的に「求めない」ことを意識する事が大切なのかもしれず、それ故に、この詩が多くの方に愛されているのかもしれませんね。
『求めない』 加島祥造
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