この事件、もともと、「過労死による安全配慮義務が企業側に問われる」をいう現在の過労死に関する考え方を明確にした事件が、1991年の「電通事件」という判決だっただけに、あれから25年たっても変わっていないのか?となかなか考えさせられるものがありますが、そんな中、厚生労働省は議員立法により平成26年成立・施行した過労死等防止対策推進法に基づき作成された「過労死白書」を公表しています。
あまりにもタイミングが良くて、少しびっくりですが、日本の根深い過労死問題に注目を集めたのではないかと思います。
白書では次のようなことが指摘されています。
【労働時間の状況】
長時間にわたる過重な労働は、疲労の蓄積をもたらし、過労死等の最も重大な要因。
我が国の労働者1人当たりの年間総実労働時間は緩やかに減少しているが(第1-1図) 、これは、パートタイム労働者の割合の増加によるものと考えられ、パートタイム労働者を除く一般労働者の年間総実労働時間は2,000時間前後で高止まり
週間の就業時間が60時間以上の雇用者の割合は、平成15、16年をピークとして概ね緩やかに減少しており 、性別、年齢層別に見ても就業者の割合は概ね減少傾向にある
性別、年齢層別には、30歳代、40歳代の男性で週60時間以上就業している者の割合が高い
平成27年における1週間の就業時間が60時間以上の雇用者の割合は、①運輸業,郵便業(18.3%)、②建設業(11.5%)、③教育,学習支援業(11.2%)の順に多い。
1週間の就業時間が60時間以上の雇用者の割合は、平成22年と比べて多くの業種で減少しているものの、一部の業種では増加している
【年次有給休暇の状況】
年次有給休暇の付与日数は長期的に微増。
年次有給休暇の取得率は平成12年以降5割を下回る水準で推移
【職場におけるメンタルヘルスの状況】
メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業所は増えてきてはいるが(第1-7図) 、仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じる労働者の割合は依然として50%を超えている。
特に「仕事の質・量」が原因でストレスを感じる労働者が多い。
【脳・心臓疾患の労災補償状況】
脳・心臓疾患に係る請求件数は、過去10年余りの間、700件台後半から900件台前半の間で推移。
脳・心臓疾患に係る支給決定件数は、平成14年度に300件を超えて以降、200件台後半~300件台で推移。
業種別に見ると、請求件数、支給決定件数ともに「運輸業,郵便業」が最多。
【精神障害の労災補償状況】
精神障害に係る請求件数は、平成21年度に1,000件を超えて以降、1,000件台で推移。
精神障害に係る支給決定件数は、平成24年度以降400件台で推移。
業種別に見ると、請求件数、支給決定件数ともに「製造業」が最多。

全体的には、相変わらず労働時間は高止まりではあるものの、急増しているわけでもない感じで、ホテル・旅館等サービス業など、業種による格差が大きく広がっているような印象を見て取ることができます。
安倍政権が掲げる「働き方改革」でも大きく取り上げられているテーマだけに、今後も企業は改善・工夫をしていく必要があると思いますが、その一つの施作の中で、ITスキルの習得というテーマも必要なのかもしれませんね。
様々な生産性向上施策はありますが、大きく影響するのがITの進展です。
こちらの方を見てみますと、技術的にはかなり多くの課題をクリアし、日々進化しているのですが、それを使う側の対応が人によって大きく格差が生まれており・・・・・
この格差が世代間におけるコミュニケーションギャップを生んでいる側面もあるのではないかと感じたりする今日この頃です。
例えば、情報の共有の共有方法一つとっても、今や「ワード」や「エクセル」データは、クラウド上でデータそのものを簡単に共有し随時更新をすることができますが、まだ、メールでデータをやり取りしている人もたくさんいます。
メールでやり取りをするとデータの管理にも手間がかかるのですが、ITを使う人のレベルがある程度そろってこないと、こういうサービスの一般的な利用はどうしても進みません。
必ずしも年齢と一致するわけではないと思いますが、生まれたときからPCがあった世代と、そうでない世代はPCへの理解力や抵抗が大きく違いますので、そのあたりへの配慮をしながら学びを深めていける仕組みが大切になります。
全てをITで解決できるわけではありませんが、できることは一つずつ取り入れながら、労働時間を短縮していきたいものですね。
過労死等防止対策白書 概要
過労死等防止対策白書 本文
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