既に突き進んでいる少子高齢化の中で今後訪れる極端な労働者不足にどう立ち向かうのか?
政府としては、成長産業に労働者を移動させることを前提に、それらがやり易い環境の整備を検討しています。
その中で次のようなことが言われています。
【リ・スキリングによる能力向上支援】
① 個人への直接支援の拡充
・学びなおしを個人が主体的に選択できるよう、5年以内をめどに個人経由での給付が可能な
制度に整える
・業種・企業を問わずスキルの証明が可能なOFF-JTでの学びなおしに重点を置く
・高い賃金が獲得できる分野、高いエンプロイアビリティの向上が期待される分野について、
教育訓練給付の補助率や補助上限についての拡充を検討していく
・キャリアコンサルタントの役割の強化を図る
・オンライン留学の取組を勧めながら、海外大学院への留学を促進する
② 基本企業の人への投資の強化の必要性
・人に投資をしている企業の離職率の上昇は見られない為、企業自身が働く個人へのリ・スキ
ニング支援強化を図る必要性を肝に銘じる必要がある
③ 「人への投資」施策パッケージのフォローアップと施策見直し
④ 雇用調整助成金の見直し
・在職者によるリ・スキリングを強化するため、休業よりも教育訓練による雇用調整を選択しや
すくするよう、助成率等の見直しを 行う。教育訓練・休業による雇用調整の場合、給付期間は
1年間で100 日まで、3年間で 150 日までであるが、例えば 30日を超えるような雇用調整と
なる場合には、教育訓練を求めることを原則とし、例外的にその日以降に休業によって雇用
調整を行う場合は助成率を引き下げるなどの見直しを検討する。
⑤ デジタル分野などの認定講座の拡充
⑥ 給与所得控除におけるリ・スキニング費用の控除の仕組みの柔軟化
【個々の企業の実態に応じた職務給の導入】
① 職務給の個々の企業の実態に合った導入
・今後年内に、職務給(ジョブ型人事)の日本企業の人材確保の上での目的、ジョブの整理・
括り方、これらに基づく人材の配置・育成・評価方法、ポスティング制度、リ・スキリングの
方法、従業員のパフォーマンス改善計画(PIP)、賃金制度、労働条件変更と現行法制・判例と
の関係、休暇制度などについて、事例を整理し、個々の企業が制度の導入を行うために参考と
なるよう、多様なモデルを示す。
この際、個々の企業の実態は異なるので、企業の実態に合った改革が行えるよう、自由度を持っ
たものとする。
中小・小規模企業等の導入事例も紹介する。
また、ジョブ型人事(職務給)の導入を行う場合においても、順次導入、あるいは、その適用に
当たっても、スキルだけでなく個々人のパフォーマンスや適格性を勘案することも、あり得るこ
とを併せて示す。
② 給与制度・雇用制度の透明性の確保
・給与制度・雇用制度の考え方、状況を資本市場や労働市場に対して可視化するため、情報開示
を引き続き進める。
・企業が有価証券報告書や統合報告書等に記載を行う際に参考となる「人的資本可視化指針」
(昨年8月策定)についても、本指針の内容を踏まえ、年内に改訂する
③ 職務給導入事例の提示
【成長分野への労働移動の円滑化」】
① 失業給付制度の見直し
・自らの選択による労働移動の円滑化という観点から失業給付制度を見ると、自己都合で離職
する場合は、求職申込後2か月ないし3か月は失業給付を受給できないと、会社都合で離職する
場合と異なる要件となっている。失業給付の申請時点から遡って例えば1年以内にリ・スキ
リングに取り組んでいた場合などについて会社都合の場合と同じ扱いとするなど、自己都合の
場合の要件を緩和する方向で具体的設計を行う。
② 退職所得課税制度等の見直し
・退職所得課税については、勤続 20年を境に、勤続1年あたりの控除額が 40 万円から 70万
円に増額されるところ、これが自らの選択による労働移動の円滑化を阻害しているとの指摘
がある。
制度変更に伴う影響に留意しつつ、本税制の見直しを行う。
・個人が掛金を拠出・運用し、転職時に年金資産を持ち運びできるiDeCo(個人型確定拠出
年金)について、拠出限度額の引上げ及び受給開始年齢の上限の引上げについて、
2024年の公的年金の財政検証に併せて結論を得る。
③ 自己都合退職に対する障壁の除去
・民間企業の例でも、一部の企業の自己都合退職の場合の退職金の減額、勤続年数・年齢が一定
基準以下であれば退職金を不支給、といった労働慣行の見直しが必要になりうる。
・その背景の一つに、厚生労働省が定める「モデル就業規則」において、退職金の勤続年数に
よる制限、自己都合退職者に対する会社都合退職者と異なる取り扱いが例示されていることが
影響しているとの指摘があることから、このモデル就業規則を改正する。
④ 求人・求職・キャリアアップに関する官民情報の共有化
⑤ 副業・兼業の奨励
⑥ 厚生労働省関係の情報インフラ整備
・職場情報提供サイト(しょくばらぼ)の機能強化と利用促進を図る。また、日本版 O-NET
(job tag)の機能強化と多様な属性の利用者に対する利便性の向上を図る
【多様性の尊重と格差の是正】
① 最低賃金
・今年は、全国加重平均 1,000 円を達成することを含めて、公労使三者構成の最低賃金審議会
で、しっかりと議論をいただく
・地域間格差の是正を図るため、地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げる
・今夏以降は、1,000 円達成後の最低賃金引上げの方針についても、新しい資本主義実現会議
で、議論を行う
② 中小・小規模企業等の賃上げに向けた環境整備等
・適切な価格転嫁対策や下請取引の適正化の推進
・中小・小規模企業の生産性向上支援策の推進
中小・小規模企業等の賃上げ実現に向けて、賃上げ税制や補助金等における賃上げ企業の優遇
や、ものづくり補助金、事業再構築補助金等を通じた生産性向上などへの支援の一層の強化に
取り組む。
その際、赤字法人においても賃上げを促進するため、課題を整理した上で、税制を含めて更なる
施策を検討する。
また、自動車産業において行われている「ミカタ」プロジェクト等を参考に、サプライヤーの
人材に対するリ・スキリング実施とこれらの中小・小規模企業向け補助金による一体的な
支援の他分野への横展開を図る。
・中小・小規模企業が従業員をリ・スキリングに送り出す場合、個人の主体的なリ・スキリングで
あっても、賃金助成などの支援策の拡充を検討する。
③ 同一労働・同一賃金制の移行の徹底
・同一企業内の正規雇用労働者と非正規雇用労働者の不合理な待遇差を禁止する同一労働・同一
賃金制の施行後も、正規雇用労働者・非正規雇用労働者間には、時給ベースで600円程度の賃金
格差が存在する。
・同一労働・同一賃金制の施行は全国 47か所の都道府県労働局が実施している。全国に321署
ある労働基準監督署には指導・助言の権限がない。同一労働・同一賃金の施行強化を図るため、
昨年12月から、労働基準監督署でも調査の試行を行い、問題企業について、労働局に報告させる
こととした。
・600円程度の賃金格差が非合理的であると結論はできないが、本年3月から本格実施された労働
基準監督署による上記調査の賃金格差是正への効果を見て、年内に順次フォローアップし、その後
の進め方を検討する。この際、必要に応じ、関係機関の体制の強化を検討する。
・同一労働・同一賃金制は、現在のガイドラインでは、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の
比較で、非正規雇用労働者の待遇改善を行うものとなっているが、職務限定社員、勤務地限定社員
、時間限定社員にも考え方を広げていくことで再検討を行う。
なお、同一労働・同一賃金制は、外国人を含めて適用されることに改めて留意する。
④ 女性活躍推進法の開示義務化のフォローアップ
・男女の賃金差異について、女性活躍推進法の開示義務化(労働者301人以上の事業主を対象に
昨年7月施行)の対象拡大(労働者101 人から 300人までの事業主)の可否についての方向性を
得るため、開示義務化の施行後の状況をフォローアップする。
⑤ キャリア教育の拡充
⑥ 外国人労働者との共生の推進

これらの改革には、これまでの日本慣例を破壊し、一時的な混乱や格差を招くデメリットが見える部分もあります。
しかし、グローバル市場の中で未来を考えた場合に、確実に求めらえる変化として、痛みを伴ってでも変化を促していこうという、政府の強い思いを感じることができる内容です。
急激な変化に耐えうる企業として、価値観、文化等を従業員も含めて変化を促しながらこれらに対応していく事が企業には強く求められていく事になりそうです。
また、今回の会議では委員の先生がそれぞれ資料を出されていますが、それらも非常に興味深い内容となっています。
特に個人的には、冨山委員の資料が興味深いものがあります。
(資料)三位一体の労働市場改革の指針
(出所)新しい資本主義実現会議(第18回)ー内閣官房
翁委員提出資料 川邊委員提出資料 小林委員提出資料 渋澤委員提出資料
冨山委員提出資料平野委員提出資料 柳川委員提出資料 芳野委員提出資料
厚生労働大臣提出資料
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